下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。従って、平成27年3月31日時点において、当社グループの財務報告に係る内部統制は有効でないと判断いたしました。
記
当社の連結子会社であるENDO STAINLESS STEEL(THAILAND)CO.,LTD.(以下「ESST社」という)において、平成21年4月からESST社の現地責任者であった元取締役が、その立場を利用して同社の会社資金横領の疑念が生じ、現地調査を実施したところ、平成21年から不正行為発覚までの7年間、虚偽・架空の経費計上により、自身の旅費交通費や飲食代等を不当に請求し、会社資金を私的に流用した不正行為が判明いたしました。
当社は平成27年12月15日付で、社外監査役(弁護士)を委員長とする調査委員会を設置し、現地調査を実地する等、被害金額を含む不正行為の真相解明、原因の究明、再発防止策等を検討し、平成28年1月29日、調査委員会より調査結果を記載した調査報告書を受領いたしました。
これに伴い当社は、不正行為により過年度決算への影響額を調査したうえ、影響のある過年度の決算を訂正するとともに、平成23年3月期第1四半期から平成28年3月期第2四半期までの有価証券報告書及び四半期報告書について訂正報告書を提出いたしました。
これらの事実は、当社の全社的なコンプライアンス意識の浸透や内部統制活動が十分でなかったこと、当社グループ各社に対する監査機能が不十分であったこと等により発生したものであると認識しております。
以上のことから当社及び当社グループは、結果として内部統制が有効に機能していなかったと判断し、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
なお、上記事実は当事業年度末日後に発覚したため、当該不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。
当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、調査委員会の報告を踏まえ、以下の再発防止策を講じてまいります。
1.企業風土の改革、コンプライアンス意識の醸成と浸透
(1) コンプライアンス教育の強化(平成28年3月より)
この度の不祥事を厳粛に受け止め、経営トップ自らが反省し、グループ全体にコンプライアンスに係るトップメッセージを発信するとともに、当社役職員にコンプライアンス意識の浸透を図るため、外部機関によるコンプライアンスについての研修会を実施し、風通しの良い企業風土を醸成してまいります。
(2) 経営理念、コンプライアンス基本方針の周知徹底(平成28年2月より)
当社は経営理念に「限りない未来の創造」を掲げておりますが、その理念を達成するためには、コンプライアンス精神に立脚した経営が必要不可欠と考えます。経営理念に基づく7項目の基本方針のもと、日常業務と明確に関連付けて、役職員にコンプライアンスの周知徹底を図ってまいります。また、コンプライアンス遵守の誓約書を全社の役職員から徴収いたします。
(3) コンプライアンス・リスク管理委員会の活性化(平成28年2月より)
リスク管理委員会をコンプライアンス・リスク管理委員会に改編し、全社にわたり潜在的に存在する不正リスクを検証し、不正を回避する有効な方策を検討し、再発防止に繋げてまいります。
2.海外子会社の監査及び管理体制の強化
(1) 海外子会社の内部監査、巡回指導の強化(平成28年3月より)
海外子会社に対する内部監査を強化するため、内部監査室員を1名増員し2名体制として、うち1名はタイ子会社に駐在し、内部監査の質的向上を目的に充実を図ってまいります。また、監査役による監査の頻度を年1回から2回に増やし、海外子会社の会計監査人との連携を強化して、財務上の異常数値有無、規程類の整備状況、社内組織の牽制等の統制環境の確認・整備を行うとともに、経理部門による巡回指導等も実施してまいります。
(2) 海外子会社の取締役会の機能強化(平成28年2月より)
不正が発生した海外子会社の取締役会が実質的に機能していなかったことを反省し、当社取締役会において、定期的に海外子会社の取締役会議事録等の報告を受けて、取締役の相互牽制に努めてまいります。
(3) 海外子会社とのコミュニケーションの強化(平成28年3月より)
当社の経営陣や管掌部門による巡回の機会を増やし、現地責任者等とのコミュニケーションを強化する中で、報告・連絡・相談のできる体制を作ってまいります。
(4) タイ駐在室の機能強化(平成28年3月より)
海外子会社の管理・運営面の指導、調整を担うタイ駐在室は、当社常務取締役の管掌とし、タイ駐在室の有効性を高めてまいります。
(5) 海外子会社の幹部社員の出張等のルール化
海外子会社の現地社長及び取締役の出張は当社常務取締役、また、幹部社員は現地社長の決裁を受けることを徹底し、かつ出張報告書の提出を義務付けます。
3.内部統制システムの強化
(1) 内部統制の評価範囲の見直し(平成28年4月より)
元取締役の不正行為は、海外子会社であるENDO STAINLESS STEEL(THAILAND)CO.,LTD.が、内部統制評価範囲検討の上では「重要な事業拠点の対象外の会社」に該当し、業務プロセスに係る内部統制の評価対象の範囲に含まれていなかったため、見過ごされてしまった面があることから、評価対象の範囲については一律の売上高基準ではなく、重要な勘定科目や事業拠点等がある場合には評価対象に含めるか否かを、柔軟に対応することといたします。なお、平成28年3月期においては、追加的にENDO STAINLESS STEEL(THAILAND)CO.,LTD.の内部統制の確認を行ってまいります。
(2) 関係会社管理規程の見直し(平成28年4月より)
モニタリング体制が実効的に機能するように、関係会社管理規程を見直し改訂を行います。
(3) 執行役員制度の導入(平成28年3月より)
経営の監督機能と業務執行機能を分離して、取締役の経営責任を明確にし、コーポレート・ガバナンスの強化を図るため、執行役員制度を導入いたします。
(4) 海外子会社における内部通報制度
当社同様、海外子会社においても、通報先を含め内部通報制度を構築すべく検討してまいります。
(5) 職務権限の見直し
重要な案件について、現地社長の独断にならないように、職務権限の見直しを行ってまいります。
4.人事・組織管理の強化(平成28年4月以降順次)
(1) 人事ローテーションの推進
この度の不祥事の発生原因に、人事ローテーションが停滞していたことがあります。人事の停滞は、不正行為の温床になりかねず、人事ローテーションを適宜実施してまいります。
(2) 人材の補強と適正な人材配置
全社の組織及び適正人員を見直し、必要な部門は人材の補強を図るとともに、海外子会社については、手薄な所へ当社から経理担当者を含め適切な人材を出向させて、牽制機能を働かせてまいります。
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