下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に影響を及ぼす重要な欠陥に該当することから、平成23年3月31日現在の当社グループの財務報告に係る内部統制は有効でないと判断しました。
記
1.経緯について
(1) 経営トップに対する不正貸付
平成23年9月に連結子会社からの内部通報メールを受けて実施した社内調査により、当社の元代表取締役会長(以下「元会長」という。)個人に対する複数の連結子会社からの貸付が明らかとなりました。その後の経緯は次の通りです。
① 特別調査委員会の設置
当社は、事実関係の更なる解明等を目的に、構成メンバー5名のうち過半数を外部の調査委員(弁護士3名、社外監査役1名)とする「大王製紙株式会社元会長への貸付金問題に関する特別調査委員会」(以下「特別調査委員会」という。)を平成23年9月16日に設置し、事実関係の把握、再発防止策等の検討を行いました。
② 特別調査委員会の調査から判明した貸付に関する事実
特別調査委員会の調査の結果、平成22年5月12日から平成23年9月6日までの間に連結子会社7社から元会長に対して直接、或いは関連会社を経由して個人的用途のための貸付が行われ、この間の貸付総額は106億8,000万円であることが判明しました。
③ 元会長に対する告発
当社は、特別調査委員会の調査によって明らかになった事実関係を踏まえ、弁護士とも相談の上、平成23年11月21日に元会長を会社法違反(特別背任罪)で東京地方検察庁に告発いたしました。なお元会長からは、本件が発覚した平成23年9月16日に、同日付で取締役を辞任する旨の届出があり、これを受理しています。
④ 過年度訂正について
平成23年3月期の有価証券報告書において、関連当事者との取引として記載しました当社連結子会社からエリエール商工(株)に対する22億5,000万円の貸付は、同社に貸し付けられた直後にその全額が元会長個人の預金口座に振り込まれていました。そのため第100期(自 平成22年4月1日 至 平成23年3月31日)の有価証券報告書の関連当事者との取引についての記載を、エリエール商工(株)に対する貸付は実質的に元会長への貸付である旨を注記した、有価証券報告書お訂正報告書を提出することにしました。
(2) 過年度決算調査に基づく過年度有価証券報告書等の訂正
当社では、連結子会社7社による元会長への貸付が平成23年度第2四半期決算に与える影響を精査するとともに、既に提出しております有価証券報告書及び四半期報告書に関しても、その記載内容の訂正の要否を検討しておりました。
他方、当社は、当社の過年度決算について調査していた当社監査法人より、次の項目について過年度の会計処理の誤りについて指摘を受けました。
指摘を受けた事項を調査したところ、監査法人に指摘されたとおりの誤りがあることを当社においても認識し、訂正が必要であると判断しましたので、各年度の連結財務諸表等を訂正するとともに、過去5年間の有価証券報告書等(第96期(自 平成18年4月1日 至 平成19年3月31日)から第100期(自 平成22年4月1日 至 平成23年3月31日))について訂正報告書を提出することといたしました。
① 繰延税金資産の計上額の訂正
② 固定資産売却取引の取消し
③ 非上場関係会社株式及びのれんの減損損失の計上
④ 関係会社への貸付金及び債務保証等に対する事業損失引当金の計上
⑤ 子会社における固定資産の減損
⑥ 関連当事者取引の記載誤り
これらは、当社の全社的な内部統制及び決算・財務報告プロセスに関する内部統制に重要な欠陥があったため、適正な会計処理が行われなかったものと認識しております。
2.上記問題発生の背景と原因
(1) 内部統制環境
以上の問題が発生した背景は、創業者以来経営権を継続して掌握し当社グループを大きく成長させてきた元会長の実父である元顧問、元会長、元会長の実弟である元関連事業担当取締役及びそのファミリー企業が当社の大株主であることに加えて、連結子会社の議決権の過半数を保有することにより、当社グループにおいて極めて大きな影響力を有していたことにあります。
また元会長は、連結子会社の代表者に貸付の事実を口止めしており、当時、内部統制の最高責任者であった元会長が内部統制を自ら無効化する行為をしていたことが特別調査委員会の調査で分かりました。
(2) 役職員の会計・経理の理解不足
内部統制環境の不備によるものだけでなく、当社の経営者や担当者が、固定資産売却や非上場関係会社株式の減損に関する会計処理などの判定基準を十分に理解しておらず、本来の会計基準と異なった運用をしておりました。
(3) 取締役会・監査役会への情報提供不足
連結子会社から元会長への貸付の事実について、取締役会・監査役会への適宜、適切な情報提供が十分にされていなかったことが特別調査委員会の調査で分かりました。
(4) 諸規程の見直し不足等
決算・財務に関する規程などを会計基準等の変更に併せて十分に見直しできていなかったことや、関係会社への統制や内部通報制度の見直しや運用の強化も不十分でした。
3.再発防止策
当社は、財務報告に係る内部統制の整備・運用の重要性を十分認識しており、以下のとおり再発防止策を講じ、適切な内部統制を整備・運用していく方針です。
当社グループの統治に関する最も重要な課題は、関係会社の株主構成の整理であると考えております。
当社として一定の連結子会社については創業家の保有する株式を買い取り、当社がこれらの会社の50%超の株主となることについて既に申し入れを行い、交渉中です。
交渉継続中は、連結子会社の株主の議決権について、創業家が従来と同じく当社の意向に沿って議決権を行使することについても合意を得るべく、創業家と交渉しております。
また、特別調査委員会の提言を受け、平成23年10月28日付で外部委員(弁護士)を含む企業統治改革委員会を立ち上げ、途中からガバナンスを専門とする外部委員(公認会計士)を加え再発防止策を協議・立案しております。今後も再発防止策の実施状況等について継続して確認していくとともに、必要に応じて追加施策を協議・立案し推進してまいります。
その他の再発防止策は次のとおりです。
① 経理規程、決算マニュアル等の改定などをはじめとした決算・財務報告プロセスの見直し
② 監査役監査および内部監査体制の強化
③ 関係会社管理の強化のための関係会社管理規程の見直し
④ 内部通報制度の規程見直し、及び社外の通報受付窓口(弁護士)の設置
⑤ 当社と関連当事者との取引、連結子会社と関連当事者との取引の是正、及び関連当事者取引を漏れなく適正に把握する仕組みの構築
以上
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