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事例研究【2009年12月期-メディシノバ・インク】

投稿日時:2010年6月18日 14:00
平成22年6月11日にメディシノバ・インク社により、「監査証明に相当すると認められる証明」に関するレターが公表されました。

会社概要
会社名:MediciNova, Inc.(メディシノバ)
本社所在地:米国カリフォルニア州サンディエゴ
上場市場:米国ナスダック・グローバル・マーケット、大証ヘラクレス
事業内容:医療用医薬品のライセンス導入・導出および開発

平成21年12月期(平成22年6月11日提出)のメディシノバ・インクの内部統制報告書では、次のように記載されていました。

なお、2009年6月30日現在の当社の時価総額に基づき、同年12月31日に終了する事業年度において、当社は米国1933年証券法(その後の改正も含む。)及び取引所法における「小規模報告会社 (smaller reporting company)」に該当しております。小規模報告会社に該当する結果、米国証券取引委員会(「米国SEC」)に提出した年次報告書(Form 10-K)は、当社の登録会計事務所の財務報告に係る内部統制報告書の証明報告を含んでおりません。経営陣の報告書は、米国SECの暫定規定に従い、当社の登録会計事務所による証明を義務付けられておりません。当該暫定規定より、当社が年次報告書に含めるべきものは経営陣による報告書のみとなります。
このように、当社の登録会計事務所は、財務報告に係る経営陣の内部統制の有効性の評価につき、米国内部統制監査基準に準拠した統合監査を行うことを要求されていません。したがって、当社の登録会計事務所は、当社の財務報告に係る内部統制の有効性についての当社の経営陣の評価につき意見を表明するに足る監査業務を実施しておりません。

   会社は財務報告に係る内部統制の有効性評価は実施したものの、米国SECの暫定規定上、小規模報告会社に該当するため、監査人による内部統制監査を実施していないと記載しています。これまでは、会社が内部統制の有効性評価を完了できなかった等の事例はありましたが、内部統制監査が実施されていない初めての事例となります。
監査人であるKPMG LLPは、「監査証明に相当すると認められる証明」に関するレターに、「財務報告に係る内部統制の有効性に対する経営陣の評価につき意見を表明するに足る監査業務を実施しておりません」との記載をしています。その一方で、財務諸表監査は実施されており、その中で実施した内部統制評価について以下のように述べています。

  当監査法人は、米国公開会社会計監視委員会の監査基準に従って監査を行いました。これらの基準は、当監査法人に対し、財務諸表に重要な虚偽記載があるか否かについて合理的な保証を得るために監査を行うことを求めています。したがって、監査には、個々の状況において適切な監査手続きを設計する際の基礎となる、財務報告に係る内部統制の評価も含まれております。ただし、これはメディシノバの財務報告に関する内部統制の有効性に対する監査意見の表明を目的とするものではありません。

監査人は財務諸表監査の実施に当たって、会社の内部統制の理解と実証手続の種類、実施の時期及び範囲を決定する目的で、監査対象企業の内部統制の検証を行っていますが、それは財務報告に係る内部統制の有効性に関する意見表明を目的としたものではないことを意味しています。
また、内部統制報告書の提出日と同時に、「内部統制監査に関する監査法人からのレターについてのお知らせ」を同社のホームページに掲載し、本件の説明を行っています。その中で発生の背景と今後の対応について、次のように記載されていました。

1. 本事態発生の背景および会社の今後の対応
(1)本事態発生の背景
当社の経営陣は、米国内部統制基準に準拠して、2009 年12 月31 日を基準日として、財務報告に係る内部統制の有効性についての評価を実施し、同日現在の当社の財務報告に係る内部統制は有効であると判断しました。他方、当社は2009 年6 月30 日時点の時価総額が75百万米ドルを下回り小規模報告会社 (smaller reporting company)」に該当したことから、米国証券取引委員会(以下「SEC」といいます。)の暫定規定に従い、当社の監査法人の財務報告に係る内部統制報告書の証明報告を含まない年次報告書(Form 10-K)を提出しております。これは、SEC の暫定規定によれば、当社の監査法人は、2009 年度の財務報告に係る経営陣の内部統制の有効性の評価につき、米国内部統制監査基準に準拠した統合監査を行うことを要求されておりませんでしたので、その有効性についての当社の経営陣の評価につき意見を表明するに足る監査業務を実施しなかったものです。また、日本の金融商品取引法第193条の2 第2 項柱書又は同項第1 号及び監査証明府令第9 条によれば、米国企業でありかつ小規模報告会社である当社においても、2009 年度より上記のような監査法人の監査業務が実施される必要があったことを、当社の経営陣が確認したのが本年1 月でした。そのため、2009年12 月期の監査業務に関する監査法人への依頼が間に合いませんでした。なお、当社は2006、2007 年度につきましては時価総額が75 百万米ドルを上回り小規模報告会社 (smallerreporting company)に該当していなかったため、財務報告に係る経営陣の内部統制の有効性の評価につき、米国内部統制監査基準に準拠した統合監査を行っており、適正である評価をいただいております。
(2)会社の今後の対応
2009 年度(2009 年12 月期)に関しては、内部統制報告書に本レターを補足書類として添付することにより対応いたしました。また、2010 年度の財務報告に係る内部統制の有効性に対する当社経営陣の評価については、米国公開企業会計監視委員会の規準に準拠した統合監査を行うことを、既に監査法人に依頼済みです。2011 年度以降につきましても、当社の時価総額等の多寡に関わらず、上記統合監査を行うことを予定しております。

米国SEC上、内部統制の有効性評価に関する監査を実施する必要がなかったため、日本でも同様に監査を実施する必要性がないという理解を当初していたことから、監査法人への依頼が間に合わなかったことが原因であるとされています。
しかしながら、メディシノバ・インクは大阪証券取引所(ヘラクレス)に上場しています。日本の株式市場に上場している全ての企業は、規模に係わらず内部統制報告の有効性評価を行い、監査人による内部統制監査を実施が求められていますが、会社・監査法人ともに日本の内部統制報告制度への認知が不足していたことが想定されます。
複数の国の市場に上場している企業は、それぞれの国の制度に対応することが求められますが、今回の事例は会社における制度理解が弱かった場合の結論の一つを示しているものということができます。